2017-04-15

DNI症例に対するNPPV

こんにちは。
先週末に開催されたケアリハ地方会の報告です。
ケアリハ地方会自体は第4回目となるんですね。今回は名大での開催でした。
小雨の降る中でしたが、鶴舞公園は花見の見物客でいっぱい。
そして、地方会会場の名大講義室も満席となる盛況っぷりでした。

RSTメンバーの中から、私とPTさん2人が演題発表を行いました。



私は、COPD増悪でNPPV管理を行った症例の中でDNI(Do-Not-Intubate)症例に焦点を絞った治療成績について発表しました。ちょっとした課題も見えてきたので紹介したいと思います。

高齢者の割合が相対的に増加する中で、DNI症例が増える傾向にあります。DNI症例であっても、COPD増悪に対してNPPVは十分に推奨されており(NPPVガイドラインではエビデンスレベルⅣ推奨度B)、特にPCO2高値は良好な予後予測因子ですので(Crit Care Med 2004;32:2002-2007)、NPPVをトライしてみてもよいと思います。

しかしfailureした場合は、どこまでNPPVで粘るのか?という現場の悩みがあるのも事実です。もしかしたら症状緩和に主眼を置いた方がいい症例もあるかもしれません。そうでないと、なんとなくNPPVを開始し、なんとなく継続して、改善なければNPPV装着されたまま看取りとなることに。もちろん、それ自体が必ずしも悪いとはいいません(実際、本人の苦痛なく、かつ、ご家族の希望で継続することも多いです)。

しかし本来は、NPPVを開始した時点で、目標設定をはっきりさせておくのが良いのでしょう。目標が達せられたかった場合は、NPPVを中止して緩和ケアに移行するのが良いかもしれません(Crit Care Med 2007;35:932-939のカテゴリー2に該当)。しかし、ここには2つの問題点が存在すると思われます。

一つは、NPPVを開始しても回復がない状態で予後が短期間と想定される段階、すなわち「最終末期」の段階をどう迎えるのかについては、患者本人の意思なくして語れないはずなのですが、事前に本人の意思表明が得られていないことが多いという問題です。

COPD終末期と認識される段階(ERJ 2008;32:796-803)で、最期の迎え方を話し合っておくのが理想ですが、まだその時点では、それなりに元気に過ごせていることもあり、後回しになりがちで、腰を据えて話すタイミングがなかなかありません。例えば在宅酸素導入になった段階で、主治医が時間を作り向き合う姿勢が必要なのかもしれません。

もう一つは、NPPVを中止し緩和ケアに移行するということ自体が、医療従事者にとっても患者家族にとっても精神的にストレスのかかる決定であるということです。実際、日本の臨床現場でどの程度実践されているのかわかりません。その辺りの実情は、倫理的に非常に重要なのですが、学会でもあまり語られずデータにもなってない部分であり、fuzzyなままなのです。