2018-12-28

産休までの働き方



今回は医学的な内容ではなく、医師の働き方について投稿させて頂きます。といっても、「女性医師の妊娠に伴う産休までの働き方、どうする?」というテーマで、自身の経験を交えてお伝えしようと思います。

・妊娠のタイミング

そもそも医師としてのキャリアの、どの時期に妊娠、出産をするのか、ということが大きな問題なのですが。こればかりは授かりもの。結婚と違い、完全には時期をコントロールできないので、ここではその議論は省かせていただきます。ただ、私の場合、すでに主要な専門医取得も済んだ後に結婚し妊娠したため、キャリアにはさほど影響を与えないタイミングであったと思われます。(結果論ですが、個人的にはベストタイミングと考えています)

・まずは周りへの報告から

さて、ハードワークで時間外勤務も多い仕事柄、妊娠すると、ある程度勤務内容を制限する必要があります。となると他の医師にしわ寄せがいくため、妊娠判明後、すぐに上司および同僚に報告をしました。幸い、どなたも快く妊娠を祝福して下さり、本当にありがたかったです。

・妊娠初期、なんとか乗り切った

妊娠悪阻は人並みにあり、食べられるものが限られ栄養が偏っていたせいか疲れやすく、また、猛烈な眠気に襲われ、帰宅後はずっと寝ているといったような生活で、生産性のある仕事が出来ませんでした。通常業務に影響が出ることはありませんでしたが、妊娠判明前に引き受けていた講演会等のエキストラの仕事の準備が、はかどらず結構きつかったです。

・時間外勤務をどこまで制限する?

妊娠前までは平均すると月4回程度の当番と月1回の当直を行っていましたが、妊娠判明後は、院内の規定に従い当直は免除となりました。当番については、院内の規定はなかったため、相談の上、回数を決めることに。当番もやらなくてもいいよと上司から提案いただだきましたが、体調をみながら続けることにしました。当番時は、呼び出しがあった場合、30分以内に診察が出来る範囲に待機していなければいけない決まりです。私の場合、自宅から病院まで30分以上かかるため、実質当直と同様、病院に泊りがけになります。妊娠20週までは月に平日2-3回、休日1回の当番業務をこなし、20-30週は平日2回の当番をこなしました。30週以降はお腹もだいぶ大きくなり、ちょっと動くだけでもしんどくなったため(あと、なにより院内のベッドで寝るのが苦痛に…)、さすがに当番から完全に外れることになりました。

・しばらくは検査や学会活動はお休み

なお、呼吸器内科医にかかせない気管支鏡検査ですが、これも制限の対象となりました。放射線被爆を避けるため、術者から外してもらうように配慮いただきました。これはやむを得ない対応とはいえ、もともと好きだった気管支鏡検査やステント留置に携われないことが残念でしたし、手技にブランクが出来てしまう不安もありました。学会発表や勉強会等への参加についても、以前は積極的に行っており、続けたい気持ちもありましたが、自分の体調を最優先にすることと、家族の希望もあり、割り切って、極力控えるようにしました。

・経験豊富なコメディカルに囲まれて

医療現場のスタッフは、圧倒的に女性が多いです。特に女性の看護師さん(すなわち出産経験者が多い)からは、度々体調を気遣っていただきました。また、休憩時間には、出産&育児の経験談を聞かせてもらう機会も多く、大変参考になりました。
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2018-10-23

ABPA診断基準 比較まとめ

ABPA(allergic bronchopulmonary aspergillosis)は、喘息患者に合併することのあるAspergillusに対する過敏性免疫反応を基盤とする疾患で、I型アレルギーとⅢ型アレルギーの両者が関与している言われています。稀ですが難治性喘息の場合、忘れてはならない病態です。

診断基準については複数ありますが、RosenbergやGreenbergerらのNorthwestern大学アレルギー科グループの研究者による古典的な診断基準が有名で、ずっとそれを下に診療をしてきました。私が不勉強なだけかもしれませんが、あまり知識のup dateをはかっておらず、近年、新しい診断基準が提唱されていることを知りました。AgarwalらインドのグループによるISHAM(International Society for Human and Animal Mycology)より2013年に提唱された診断基準(Clin Exp Allergy 2013;43:850-73)で、下の表に示します。Rosenbergらの診断基準に比べるとずいぶん簡略化されましたし、即時型皮膚反応についても、特異的IgEで代用出来ますし、沈降抗体についても、より陽性率の高い特異的IgGで代用することが出来る(※)のが良いですね。

※ABPAにおけるアスペルギルス沈降抗体(オクタロニー法)の感度は27-87%(Mycoses 2017;60:339, J Asthma 2013;50:759-63,Chest 2007;132:1183-90 )。一方、アスペルギルス特異的IgG抗体(ImmunoCAP法) (Cut-offを26.9mgA/Lとする)の感度88%、特異度100%(Mycoses 2017;60:339)。 




2018-10-19

アスピリン喘息(AERD) まとめ

    少し前のNEJMにAERDのreview articleが載っていたのでまとめました。(NEJM 2018;379(11):1060-70)
    
    これまで、aspirin intoleranceaspirin idiosyncrasyaspirin-induced asthmaなどと呼ばれてきた背景があり、今でも日本ではアスピリン喘息(AIA)と呼ばれることが多いですが、最近では、アメリカを中心とした諸外国ではAspirin-exacerbated respiratory disease(AERD)、欧州や中東ではNSAID-exacerbated respiratory diseaseと呼ばれているようです。


■歴史的背景


・何千年も前から白柳の樹皮から生成されたサリチル酸に解熱・鎮痛作用があることは知られていた。

1897年にバイエル社がサリチル酸をアセチル化して、より胃腸障害の少ないアセチルサリチル酸を合成、商品名をアスピリンとして1899年より世界中で使用されるようになった。

1922年、Widalらによりアスピリンにより呼吸障害が引き起こされると報告。その他、NSAIDsでも同様の症状が引き起こされることが判明。

1967年、Samterらによりには鼻茸、喘息、アスピリンに対する過敏反応を三徴とする疾患と捉えて報告。



AERDの特徴


AERDの典型的な症状:

暴露時の症状として、上気道症状(鼻閉、鼻漏、くしゃみ)と下気道症状(喉頭けいれん、咳、喘鳴)。稀に(アナフィラキシーと同様の)胃腸症状(腹痛、吐気)や皮膚症状(紅潮、蕁麻疹)などの随伴症状を認めることも。

また、通常、通年性の鼻閉や鼻漏、嗅覚障害を認める。

・疾患の重症度は様々。(上気道がおかされるだけ~リモデリングの生じた重症喘息や重症な副鼻腔炎を伴うことも)

・アルコール摂取により上述したような上下気道症状が出現する。(特に赤ワインとビール) この機序は不明だが、エタノール以外の何かしらの成分により生じるのであろう。



■原因



・発症年齢は30歳頃(つまり後天的)で、発症原因は不明だが、遺伝的な感受性にウイルス感染や大気汚染などの外的要因が加わって発症するのではないかと推察。(実際、約50%の症例は、ウイルス感染契機に発症するともいわれている。)
やや女性に多い。人種差はない。家族性はない。

AERDのうち2/3に何らかのアレルギー素因があるとされる。しかしアレルギーが発症に関与しているわけではないとの見方が強い。



■頻度



・メタアナリシスによると、AERDの頻度は、

喘息患者の7.2%

重症喘息患者の14.9%

鼻茸を有する患者の9.7%

慢性副鼻腔炎患者の8.7%

(Rajan JP et al. J Allergy Clin Immunol 2015;135(3):676-681.e1)

2018-10-06

呼吸器内科医が知っておきたい BPD


DPB(diffuse panbronchiolitis)ではありません、そう、今回取り上げたいのはBPD


ここ数十年間の周産期医療の発達とともに、早産児や低出生体重児の救命率が向上しているのは皆さんご存知の通りです。しかし周産期を乗り越えればその後の経過は問題ないかというと、そうではありません。実は、早産児の成長後に長期的な合併症を生じることが問題となっており、中でも慢性呼吸器疾患を生じることが注目されています。そこで押さえておきたいのが気管支肺異形成(bronchopulmonary dysplasiaBPD)という病態です。



BPD1967年にNorthwayらにより提唱された概念で、当初は、早産児に生じるRDS(respiratory distress syndrome)に対して酸素投与と人工呼吸管理が行われることにより肺の線維化が引き起こされBPDに至ると考えられていました(いわゆるold BPD)(NEJM 1967;276:357-68)。しかしRDS自体の治療や予防が確立され、RDS後に高度の線維化を生じることが少なくなりました。



早産児は、肺胞構造が未完成のまま生まれてくる()ことに加え、RDSに対して行われた酸素投与や人工換気によって生じた炎症性サイトカインにより、出生後の肺胞の発育がさらに阻害され、BPDに至ると考えられるようになりました(New BPD)



実際、病理学的には、肺の発育の中断により中隔形成が障害された大きく数の少ない肺胞や、気道上皮のリモデリング、狭小化が認められるようです(Hum Pathol 1998;29:710-7)



Wongらは、1980-1987年に生まれた1500g未満の低出生体重児で酸素投与を要した21例を長期間追跡しFEV1の低下や気腫性変化が見られることを報告しています(ERJ 2008;32:321-328)。これらはまさにCOPDの病態ですね。


20歳男性、非喫煙者(28週 1355gで出生し生後321日間酸素投与を要した)

2018-09-02

気管支動脈の解剖

6-8月は喀血の患者さんが立て続けに入院となり、緊急対応を迫られる日々が続きました。麻酔科医と協力しながらダブルルーメン挿管チューブを用いた気道確保やブロッカーカテーテルの挿入を行うこともありました。止血処置に関しては、当院では循環器科医が気管支動脈塞栓術を施行してくれます。他科のフットワークがよく、本当にありがたい限りです。

ところで、気管支動脈塞栓術を行うにあたり、気管支動脈の解剖学的な知識が必要になります。一度おさらいしておきましょう。

ちなみに、気管支動脈の解剖については、古くはCauldwellやBotengaらのまとめがあるようですが、古すぎて入手できなかったため、今回は、Ittrichらによるreviewを参考にまとめました。(H . Ittrich et al. Rofo. 2015 Apr;187(4):248-50)

・気管支動脈は気管支や肺、肺動静脈、横隔膜、縦郭臓側胸膜、気管支周囲のリンパ節等へ栄養血管で、肺循環の約1%を担う。

・気管支動脈は主気管支に沿って走行し、肺門から侵入し気管支~呼吸細気管支レベルに分布するが、毛細血管網を経て気管支静脈になり肺静脈に入り左房に流入する(=解剖学的シャント)。なお、肺門より中枢レベルを還流している気管支静脈は奇静脈、副半奇静脈より上大静脈を介して右房に流入する。

0.61%と非常に稀な頻度だが、気管支動脈と冠動脈のシャントが観察されることがあり気管支動脈塞栓術の際に重篤な合併症に繋がる。

・気管支動脈の起始部は、第5-6胸椎の高さ(ちょうど透視で見ると左主気管支が大動脈と交差する高さ)にあることが多い。起始部の径は1.5mm以下、気管支肺区域で0.5mm以下であり、2mm以上であれば異常血管と言える。

・気管支動脈の分岐はバリエーションが多いが、原則として、
 右気管支動脈は、右第3肋間動脈と共通幹(ICBT)を形成することが多い。
 左気管支動脈は、ほぼ大動脈から直接分岐する。

・気管支動脈の分岐パターンを、下図A~Dに示す。

 A:肋間気管支動脈幹(ICBT:intercostal bronchial trunk)から右気管支動脈と肋間動脈(ICA:intercostal artery)が分岐。左気管支動脈は大動脈から2本分岐する。(右1 左2  40.6%)
 
   B:肋間気管支動脈幹から右気管支動脈と肋間動脈が分岐。左気管支動脈は大動脈から1本だけ分岐する。(右1 左1  21.3%)

   C:肋間気管支動脈幹から右気管支動脈と肋間動脈が分岐し、さらに大動脈からも直接、右気管支動脈が分岐。左気管支動脈は大動脈から2本分岐する。(右2 左2  20.6%)

   D:肋間気管支動脈幹から右気管支動脈と肋間動脈が分岐し、さらに大動脈からも直接、右気管支動脈が分岐。左気管支動脈は大動脈から1本だけ分岐する。(右2 左1  9.7%)

2018-09-01

VRCZとEBの眼症状


呼吸器内科医がよく使用する薬剤の中で、眼症状を起こしうる薬剤が2つあります。それぞれの特徴をまとめておきましょう。



ボリコナゾール(VRCZ)

国内多施設共同試験におけるデータによると、羞明が25%、視覚異常 24%、霧視 5%、網膜出血 4%と比較的高頻度で生じる。特に投与初期(1-7日目)に多く認められ、一過性かつ可逆性で、特に処置を必要とせず消失する(二木ら 日本化学療法学会雑誌 2005 Nov;53(S-2):32-50)。網膜における機能的な作用により生じると考えられるが、機序はよくわかっていない。視覚異常に伴って(特に閉眼時に)幻覚が見えることもあるようだが、血中濃度との関連性は認められなかった(Sakurada H. et al. Pharmazie. 2016 Nov 2;71(11):660-664)。入院患者さんだとせん妄を引き起こす可能性もあり、注意が必要。また、不安を和らげるため、開始前に視覚障害の出現について言及しておくのがよい。



エサンブトール(EB)

1-3%に視神経障害を起こす。投薬後3か月から起こり得るが、半年‐1年以内(平均7か月)に多くみられる。亜急性の進行で両眼の視力低下(小さな文字が見えにくい、かすむ、暗いなど)、中心性暗点を呈する。頻度は、低いが色覚障害を呈することもある。早期に発見すれば可逆的であるが、発見が遅れ高度に進行すると不可逆的。よって、全例、12か月毎に定期視機能検査を行う必要がある。リスクファクターとしては、高齢者、糖尿病、腎機能障害、貧血、低栄養、アルコール中毒、亜鉛欠乏などが挙げられる。(参考文献:肺MAC症診療 Up to Date-非結核性抗酸菌症のすべて 南江堂)

2018-08-16

肺エコー 用語集


近年、注目を集めている肺エコー。当科でも使用しているのですが、今ひとつ用語が頭に定着しないので、個人的な備忘録を兼ねてまとめてみました。


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A-line:プローブと胸膜の間で反響したエコーが映し出された多重反射像。やせている患者では正常肺でも見られる。しかし気胸患者の場合、プローブと空気との反射が起こりより顕著に見られる。また肺気腫、喘息など過膨張となる疾患で描出されることがある。

B-line:臓側胸膜から縦に放射状に延びて深部まで届くアーチファクト。健常者でも1画面に1本程度は認めることがあり、3本以上あれば病的。肺実質に水分を多く含む肺水腫で見られる。
comet tail:胸膜ラインから内側に延びるアーチファクト。

lung slidingBモードで臓側胸膜が呼吸運動で動く様子。正常の場合に観察される。臓側胸膜の動きはcomet tailを目安にすると観察し易い。

seashore signlung slidingの様子をMモードで観察した際に、胸膜以下は粗い均一なノイズが入ったように見える。

lung pulse:心拍が胸膜に伝わり、心拍に同調して胸膜が小さく水平方向に振動している様子。正常の場合に観察される。lung slidingがあると分かりづらいため、呼吸を一時的に止めてもらうと見やすくなる。

pleural sign:胸膜から発生する3つのサイン(lung pulselung slidingB-line)をまとめてこう呼ぶ。pleural signがあれば気胸は否定的。

lung point:正常肺と気胸背の境目。気胸の範囲の推定に使える。

stratosphere sign (barcode sign)Mモードで見えるはずのseashore signが見えず、バーコード状の横線だけが見えること。気胸の存在を示唆。


参考文献:「こんなに役立つ肺エコー」メディカルビュー社

2018-07-08

吸入ステロイド使用中にも関わらず呼気NO高値が持続する理由

近年、呼気NOが測定出来るようになり喘息の診療に深みが増しました。
しかし、その分、呼気NO値に頭を悩まされることもあります。

今回のClinical Questionはこれです。

喘息診療において、吸入ステロイド使用中にも関わらず呼気NO高値(呼気NO50ppb)が持続する時に何を考えるか?』

・症状が残存している場合:

以下のことを考えましょう。

    まず確認すべきは、服薬アドヒアランス不良、吸入手技不良
(
これは喘息診療の基本中の基本)
    吸入ステロイドの用量不足
(
ステップダウンを行った後に注意が必要)
    持続的な抗原暴露
    副鼻腔炎の存在
    過去喫煙
    末梢血好酸球数増多
(
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の存在にも注意)
    慢性好酸球性肺炎の潜在
    遺伝的素因の関与
(Th2
炎症のシグナル伝達に関わるIL-4受容体α鎖の遺伝子多型など)

※④~⑥は、Matsunaga K et al. Clin Exp Allergy. 2012;42:775-81より

・症状がなく、喘息自体も落ち着いている場合:

ある一定の割合で、コントロール良好な患者の中に呼気NO高値の症例がいるのは事実です。以前ある講演で(FENO>40ppbをcut offとしたとき)30%程度と伺ったことがあります。確立された解釈はないそうですが、下記①~③の背景がある他(根拠は不明確でした)、④の関与も知られているようです。

    男性
    高身長
    アトピー素因
    構成型NOS(cNOS)の関与
(cNOS
をコードするNOS1遺伝子の反復配列多型の存在により、ステロイドの関与を受けないcNOSの発現を生じ、呼気NO値に影響する可能性がある)

ただし、ここで注意すべきは、「症状がない=コントロール良好」ではないので、真の意味でコントロール良好かを確認しましょう。

その上で、無症状のコントロール良好な症例で呼気NO高値を呈した時、吸入ステロイドをステップダウンするかどうかは本当に迷います。もしも実際にステップダウンするのなら、症状悪化しうることに留意しながら慎重にフォローをしましょう。


参考文献:
・An official STS clinical practice guideline: interpretation of exhaled nitric oxide levels(FENO) for clinical applications. Am J Respir Crit Care Med. 2011;184:602-15  Table4, 5

・呼気一酸化窒素(NO)測定ハンドブック作成委員会, 日本呼吸器学会肺生理専門委員会. 呼気一酸化窒素(NO)測定ハンドブック. メディカルレビュー社. 2018

第55回 呼吸器内視鏡学会 優秀演題に選ばれました

昨日7月7日に開催されました、呼吸器内視鏡学会 中部支部会の報告です。

今年から当科で働き始めた谷村先生が「局麻下胸腔鏡下生検で診断したクリプトコッカス胸膜炎の一例」を発表してくれました。

内視鏡学会での発表は彼女にとって2回目でしたが堂々としていました。
希少症例ということもあり、質問がたくさんありましたが、前回よりも質問に頑張って答えており成長した姿が見てとれ安心しました。

最後には、優秀演題にも選んでもらえて、苦労してスライドを作った甲斐がありましたね
論文にしなさいとの部長命令が出ましたので、もうひと仕事頑張ってくださいね。

2018-07-07

EWS中の新しい試み~トパーズを用いた定量的バルーンテスト

EWSの話題はこのブログ内でも何度か取り上げていますが、EWS施行中の課題として、責任気管支の同定方法である、バルーンテスト(バルーン閉塞試験)の精度が低いことが挙げられます。

バルーンテストとは、関与が疑われる気管支を葉気管支→区域支→亜区域支の順にバルーンで約15~20秒間閉塞し、気漏が消失もしくは著減した気管支を責任気管支と同定する方法のことを指します。これにて責任気管支が同定出来る症例は約半数とされており、判別が困難な場合は、CT画像からの推定責任気管支をえいやっとEWSで充填してしまうしかないのが現状です。

同定が難しい理由として、
① 気漏を生じる責任気管支が1つでない
  (同一葉内に側副路を介した他の関与気管支が複数ある)
② 葉間胸膜をまたいで側副換気が存在している症例がある
③ 従来型の三連ボトルシステム持続吸引器だと気漏の程度を主観的にしか判断出来ない

①が大多数、②は稀と思いますが、これらに関しては、例えば、EWSを1-2区域に充填し、その後、再度バルーンテストを追加することで、側副路を同定出来、気漏の減少を得られる可能性があります。(つまりめげない気持ちとしつこさが重要です)

③については、医療機器の問題なので、なんとかなりそうです。
そこで、近年、特に呼吸器外科領域で使用が広まっているデジタルモニタリング式持続吸引器(ThopazTM:トパーズ)をバルーンテストで使用してみました。


Medela社の製品ホームページより抜粋



2018-06-08

読影のレクチャーをしてきました




今年、慢性呼吸器疾患看護認定看護師さんたちが中心となり、日本呼吸器看護研究会が立ち上げられました。その記念すべき第1回目のセミナーが5月に大阪で開催されたのですが、光栄なことに講師として参加する機会を頂き「看護師でもわかる画像の見方」と題して胸部X線読影のレクチャーをしてきました。




実は当院では、毎週金曜に、その週に呼吸器内科外来および救急外来に来院したすべての患者さんの胸部X線画像を読影して見落としがないかをチェックしています。(ローテーターの研修医の教育目的も兼ねています…)

それなりにしんどい作業ですが、何年も続けていると、見逃しやすい肺癌シリーズ、無気肺シリーズ、変わった画像シリーズなど、みごとな症例コレクションが出来上がるわけですね。なので、その中から選りすぐりの画像を拝借してレクチャーに臨みました!

看護師さんがX線をみて「診断する」という機会はないかもしれませんが、医師がどこに着目し、どんなことを考えているのか、共通言語としてのX線用語を理解して頂けるように、時々クイズをはさみながら、楽しく1時間半のレクチャーを終えることが出来ました。

石巻赤十字病院 ICON外来見学ツアー


お久しぶりです。生活環境の変化や体調不良などでしばらく更新をお休みさせていただいておりました。といってもずっと更新をさぼっているわけにも行かないので再開することにしました。

この半年間にいろいろな出来事がありましたが、しばらく書きためていたので、遡って御紹介していきましょう。

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20183月末に、仙台にある石巻赤十字病院に看護師、理学療法士らとともに行って参りました。

石巻赤十字病院では、通称ICON(=アイコン:石巻COPDネットワークの略)外来といって、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者さんを開業医さんと連携して診療にあたるという地域連携の取り組みを先進的に行っており、当院でも同様のシステムを取り入れるため下準備として、見学させてもらった次第です。

地域連携というと単に、基幹病院⇔開業医との情報のやりとりのように聞こえるかもしれませんが、ICONのすごいところはそれだけに留まらないところです。

COPDは、慢性疾患であり、糖尿病と同じように、継続的な薬物療法とsick day対応が不可欠です。そのため、患者さん(及び家族)が疾患を理解し、日々の生活に気を付けながら増悪を予防するという体制が必要になります。もちろん、普段の外来できめ細やかな生活指導を行うことが出来ればいいのですが、時間に追われ、診察と投薬でいっぱいいっぱいとなることも多々あります。つまり医師だけですべてをカバーしきれないんですね。

ICONのすごいところは、基幹病院の看護師や理学療法士が中心になり、患者さんの目線に立って生活背景を聞き出し、個別のセルフマネジメント方法を提案しサポートする仕組みをまず、第一に整えたところです。

そしてそのように教育的な指導を受けた患者さんが地域に増えることで開業医の先生方も管理がし易くなり、かつ、患者さんも軽症増悪のうちに受診するようになるため、早期対応の結果、重症増悪予防効果が得られるのです。基幹病院も開業医にも、患者さんにとってもメリットがある仕組みなのです。

石巻では喫煙患者さんが多く、必然的にCOPD患者さんが多かったため、なんとかしなければという必要に駆られて立ち上げた仕組みという裏話もありましたが()

大垣市民病院でも、多くのCOPD患者さんが通院されていますので、地域の開業医の先生方と役割分担をしながら、教育プログラム&連携のシステムを構築出来るとよいですね。

見学で学んだことを生かせるよう目下奔走中ですが、夏頃を目安に解禁出来る様に頑張ります。

帰りの電車の中はやっぱりみんな牛タン弁当でしたね♪