桜の季節ですね。この写真は数日前、とある場所で撮影したものです。3分咲きくらいでしょうか。でも、もうすぐ花開きそうなつぼみ(芽)もちらほら。ところで「木の芽(tree-in-bud)」といえば結核の画像所見として有名ですね。今回は、その病理学的背景と画像上の特徴、注意点などをまとめてみました。
tree-in-bud appearanceとは
気管内播種を表し、活動性結核の重要な所見の一つ。
小葉中心性結節が‘’木の芽‘’、厚くなった細気管支が‘’木の枝‘’に相当して見えることからこのように呼ばれる。
結核 2009;84:551-57より抜粋 |
成り立ち
二次性結核において、菌は気管支内腔を伝って散布されるため、終末細気管支~呼吸細気管支~肺胞道の内腔、細葉内(※)に肉芽腫が形成される。
(※これがややこしい話なのだが、この「細葉」とは、結核病学特有の名称で、Millerの二次小葉内の3-5個程度あるとされる「細葉」ではなく、Millerの1次小葉、つまり肺胞道で支配されるもっと狭い領域のこと。)
CT所見
CTでは、小葉中心性に胸膜や肺静脈などの小葉間隔壁から2-3㎜離れて規則正しく配列した2-10㎜大の結節を認める。結節は辺縁明瞭で、高濃度である。辺縁明瞭な理由は、肉芽腫病変が、被包化され含気を伴わないから。周囲の肺は正常なことが多いが、組織反応が強い場合は滲出性反応を反映して周囲にすりガラス影を伴うことがある。
注意点
宿主の免疫応答が低下している場合、肉芽腫形成が生じないため、tree-in-budの所見はみられないこともある。
また、気腫性病変が強い患者は、末梢気道から肺胞領域が破壊されて病変の首座が存在しないため、みられないこともある。
特殊病型
慢性細葉性散布肺結核症(岡病型ⅡB)という病型があり、一見、粟粒結核のようなびまん性の粒状影だが、よく見ると、経気道散布、つまり細葉病変(細葉の定義は上記※参照)を呈する。空洞などの散布源が見られず細葉病変が主体となる稀な病態。成因はよく分かっていない。
まれな呼吸器関連疾患ケースファイル50より抜粋 |
鑑別
結核においてのtree-in-budは、上に記した機序で成立する病変であるが、結核に特異的というわけではなく、経気道感染であれば生じうる。鑑別疾患としては、マイコプラズマ肺炎などの感染性細気管支炎。マイコプラズマでは、気管支の陰影がぼやけることが多い。
参考文献
結核 2009;84:551-57
まれな呼吸器関連疾患ケースファイル50
画像診断 2010;35(5):384-407
感染症学雑誌 2006;80:70-75
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