バルーンテストとは、関与が疑われる気管支を葉気管支→区域支→亜区域支の順にバルーンで約15~20秒間閉塞し、気漏が消失もしくは著減した気管支を責任気管支と同定する方法のことを指します。これにて責任気管支が同定出来る症例は約半数とされており、判別が困難な場合は、CT画像からの推定責任気管支をえいやっとEWSで充填してしまうしかないのが現状です。
同定が難しい理由として、
① 気漏を生じる責任気管支が1つでない
(同一葉内に側副路を介した他の関与気管支が複数ある)
② 葉間胸膜をまたいで側副換気が存在している症例がある
③ 従来型の三連ボトルシステム持続吸引器だと気漏の程度を主観的にしか判断出来ない
①が大多数、②は稀と思いますが、これらに関しては、例えば、EWSを1-2区域に充填し、その後、再度バルーンテストを追加することで、側副路を同定出来、気漏の減少を得られる可能性があります。(つまりめげない気持ちとしつこさが重要です)
③については、医療機器の問題なので、なんとかなりそうです。
そこで、近年、特に呼吸器外科領域で使用が広まっているデジタルモニタリング式持続吸引器(ThopazTM:トパーズ)をバルーンテストで使用してみました。
Medela社の製品ホームページより抜粋 |
すると、定量的に気漏の減少の程度を確認することが出来、また責任気管支の関与の程度も推定することが出来ました。また、実際に1つ1つEWSを充填する度に気漏が減少していくのが数値として確認出来るので、各段階ごとに手ごたえと安心感を感じ、非常にやりやすかったです。
ところで、Thopazでいうところの気漏の数値と、従来型の持続吸引器で見てきた気漏のボコボコの程度との関係が今一つ分かっていなかったので調べてみました。
従来型 Thopaz (ml/min)
咳嗽で気漏なし-----------4.4±7.5
咳嗽で気漏あり-----------20.4±18.1
発声であり-----------------63.6±13.7
安静呼吸時にあり--------662.2±113.0
日呼外会誌 2016;30(5):534-539 (当院呼吸器外科 石黒先生の論文でした!)
大方このような相関になっているのですね。参考にしていきましょう。
今回我々がEWSを施行した症例は当初、650ml/min程度の気漏が続いており、バルーンテストで100~300ml/minの減少を認めておりました。推定関与気管支をすべて充填することで0-20ml/minとなり手技を終了することが出来ました。
今後も、EWSの際には積極的にThopazを利用したいと思いました。
0 件のコメント:
コメントを投稿