呼吸器内科医がよく使用する薬剤の中で、眼症状を起こしうる薬剤が2つあります。それぞれの特徴をまとめておきましょう。
ボリコナゾール(VRCZ):
国内多施設共同試験におけるデータによると、羞明が25%、視覚異常 24%、霧視 5%、網膜出血 4%と比較的高頻度で生じる。特に投与初期(1-7日目)に多く認められ、一過性かつ可逆性で、特に処置を必要とせず消失する(二木ら 日本化学療法学会雑誌 2005 Nov;53(S-2):32-50)。網膜における機能的な作用により生じると考えられるが、機序はよくわかっていない。視覚異常に伴って(特に閉眼時に)幻覚が見えることもあるようだが、血中濃度との関連性は認められなかった(Sakurada H. et al. Pharmazie. 2016 Nov 2;71(11):660-664)。入院患者さんだとせん妄を引き起こす可能性もあり、注意が必要。また、不安を和らげるため、開始前に視覚障害の出現について言及しておくのがよい。
エサンブトール(EB):
約1-3%に視神経障害を起こす。投薬後3か月から起こり得るが、半年‐1年以内(平均7か月)に多くみられる。亜急性の進行で両眼の視力低下(小さな文字が見えにくい、かすむ、暗いなど)、中心性暗点を呈する。頻度は、低いが色覚障害を呈することもある。早期に発見すれば可逆的であるが、発見が遅れ高度に進行すると不可逆的。よって、全例、1‐2か月毎に定期視機能検査を行う必要がある。リスクファクターとしては、高齢者、糖尿病、腎機能障害、貧血、低栄養、アルコール中毒、亜鉛欠乏などが挙げられる。(参考文献:肺MAC症診療 Up to Date-非結核性抗酸菌症のすべて
南江堂)
当院入院中の結核患者さんには、毎日新聞の文字を片目ずつ視てもらい見え方がおかしくないかチェックしてもらうように指導しています。
特に、EBについては長期使用中に重篤化し患者さんのQOLを落とす可能性もあるため注意が必要です。私も過去に、眼科への紹介状を渡していたにも関わらず、本人が受診しておらず文字が見えづらくなり生活に支障を来すほどまで視力低下が進行してしまった患者さんを経験したことがあります。幸い薬剤中止により徐々に視力は戻ってきましたが…。本人にもしっかりと説明しておく必要もありそうです。
0 件のコメント:
コメントを投稿