2020-03-03

WHO 新型コロナウイルスに関する調査報告書 ~ Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) ~


Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019
(COVID-19)
                     16-24 February 2020



現在、新型コロナウイルス(COVID-19)による世界的な感染が拡大する中、最初に感染発症した中国のNRS(National Reporting System)によると、中国国内の感染者数は110から22日までは急増したものの、23-27日の間にプラトーに達しその後は減少に転じ収束に向かっているとされます。今回、中国国内のCOVID-19のアウトブレイクの現状と封じ込め措置の過程について記された調査報告書がWHOと共同で作成、公開されました。(https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf) 現在進行形のアウトブレイクへの対応の理解を深めること、また、感染が確認されていない地域が今後に備えておくべき知識の共有などが主の目的ではありますが、最前線の医療現場で働く我々にも参考になるCOVID-19感染の臨床像についての記載がありましたので、抜粋・要約してお伝えします。(なお原文は全部で40ページあり、かなり読みごたえのあるものですが、ぜひ一度目を通していただくことをお勧めします。)                                           



以下はすべて2020/2/20時点における中国国内の統計データです。



■疫学:

検査による確定診断例:55924 年齢中央値 51(生後2-100)

ヒト-ヒト感染は主に家族間で生じている。クラスター発生の約8割が家族内感染である。



■感染経路:
飛沫、接触感染。特定の医療行為によるエアロゾル感染があり得る。糞便中にもウイルスが確認された例もあり、主要な感染ルートでないにせよ糞口感染の可能性も念頭に置く。(糞便内には、30%の人で発症5日目ごろよりウイルスRNA検出されはじめ、中等症例では4-5週間まで持続するともいわれる。)



■症状:

COVID-19の症状は非特異的。無症状から重症肺炎を発症するもの、死に至るものまで様々。典型的な症状を挙げると、発熱(87.9%)、乾性咳嗽(67.7%)、倦怠感(38.1)、喀痰(33.4%)、息切れ(18.6%)、咽頭痛(13.9%)、頭痛(13.6%)、筋肉痛・関節痛(14.8%)、悪寒(11.4%)、嘔気・嘔吐(5.0%)、鼻閉(4.8%)、下痢(3.7%)、喀血(0.9%)、結膜充血(0.8%)



感染後、軽度の気道症状や発熱を呈するまでに5-6日かかる。(潜伏期間の中央値は5-6日。最短で1日、最大で14)



■重症化の割合と死亡率について:


全体
小児(19歳以下)
(全体の約2.4%を占める)
軽症/中等症 mild/moderate
(
軽度の肺炎も含む)
80%
97.3%
重症 severe
(
呼吸数30/分以上 or SpO293% or P/F<300mmHg and/or 24-48hr以内に陰影が肺野の50%以上に及ぶ)
13.8%
2.5%
重篤 critical
(
人工呼吸管理を要する呼吸不全、敗血症性ショックand/or 多臓器不全)
6.1%
0.2%

無症候性の感染について報告はされているが、真の無症候例は稀であり、多くの場合は何らかの症状を呈するのではないかとされている。



重症化の危険因子:
60
歳以上、基礎疾患あり(高血圧、糖尿病、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、悪性腫瘍など)



粗死亡率(Crude fatality ratio; CFR)

3.8%(2114/55924)  
アウトブレイク初期には高かったが時間がたつにつれ低下傾向にある


地域別→武漢では5.8%、武漢以外の中国国内では0.7%

 年齢別→80歳以上 21.9%

 男女別→男性4.7%、女性2.8%

 基礎疾患別→基礎疾患なし 1.3%  心血管疾患あり 13.2%、糖尿病あり 9.2%、高血圧あり 8.4%
  慢性呼吸器疾患あり 8.0%、悪性腫瘍あり 7.6%

                                     

■臨床経過:

発症から診断確定までは、中央値12日。

軽症例では、発症からおよそ2週間で回復。

重症以上では、発症から約1週間で低酸素血症などの重症化の兆候を呈する。
   発症から3-6週間で回復。
  (
死亡例の場合、発症から死の転帰を辿るまでに2-8週間)



注:本文Figure5を抜粋
    図内の各矢印の太さは、患者の割合を示しています↑



2020/2/20時点で、24%が回復
(回復の定義:3日以上の解熱、症状改善、陰影改善、24hr以上あけて2PCR陰性確認)

広東省では、重症例のうち26.4%が退院し、46.4%が軽度の症状を有するが軽症の肺炎に
再分類され回復過程にある。



■検査について:

RT-PCR検査を行う上で知っておきたいこと:

COVID-19ウイルスは、気道(上・下気道)、糞便、血液検体より検出される。発症の1-2日
前から上気道で検知できるようになり、中等症例では7-12日持続、重症例では2週間まで
続く。