2019-10-03

肺癌における副腎転移と副腎不全


呼吸器内科医として、というか内科医として、こんな疾患も診れなければなりませんね。



副腎転移による副腎不全



 肺癌患者で副腎転移を有する症例は比較的多く、時に、疼痛や貧血を伴う副腎出血を合併することもあります。剖検例ですが、肺癌の31-43%に副腎転移を合併したとの報告があります。このように副腎転移自体の頻度は多いにも関わらず、副腎不全を生じた症例に出会うことは稀です(実際、副腎不全の原因の中で悪性腫瘍の転移によるものは1.1)。その理由として、仮に副腎転移が生じても、副腎の90%以上の破壊が起こって初めてコルチゾール分泌能の低下を来すとされており、副腎不全が顕在化しづらいためと考えられます。

また、副腎不全に伴う症状は、倦怠感や体重減少、食欲不振など非特異的であるため、積極的に疑わない限りは、癌に伴う諸症状として見逃されている可能性もあります。

以下、診断と治療について簡単にまとめてみました。


・診断の流れ



 早朝コルチゾール 正常~低値(<18μg/dl未満)

 ACTH 正常~高値



 であることが多く、可能であればrapid ACTH負荷試験を行うことが望ましい。


慢性副腎不全の場合、生理的補充量をヒドロコルチゾン(コートリル®)により投与する。


 補充量の目安:コルチゾールの1日あたりの産生量は5-10mg/m2/day

          ↓

 処方例:コートリル® 10-20mg/day   分2なら朝:夕=21 もしくは31 分3なら朝:昼:夕=32:1 (より生理的変動に近い)



 シックデイ時:クリーゼ予防のため、常用量の2-3倍の補充を行う


急性副腎不全(副腎クリーゼ)を発症した場合は、グルココルチコイドだけでなくミネラルコルチコイドの喪失、体液量の減少、カテコラミン合成と作用の低下などがみられるため、循環動態を維持するために1000ml/hrで生食投与を行いつつ(症例により適宜調整)、ヒドロコルチゾンの補充を行う。

 補充量の目安:ヒドロコルチゾン100IV後、5%Glu100-200mgのヒドロコルチゾンを混注し24hrかけて持続投与。(あるいはヒドロコルチゾン25-50mg6hr毎に投与)

(Jung C, et al. Med J Aust 188: 409-413, 2008)



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※参考文献:日内会誌 105; 640-646, 2016