2020-02-23

アフィニトール ~カルチノイドの治療薬~ まとめ

まずは肺癌の組織分類からおさらいしましょう。
WHO分類によると、腺癌、扁平上皮癌、神経内分泌腫瘍、大細胞癌の4つに分類されます。さらに、神経内分泌腫瘍(NET; neuroendocrine tumor)は、well-differentiated (low grade to intermediate grade) subgroup であるカルチノイドと、poorly differentiated subgroup (high grade) である神経内分泌癌(NEC; neuroendocrine carcinoma、小細胞癌・LCNEC)に分けられます。カルチノイドはさらに定型と異型に分けられます。

カルチノイドは全肺癌数の約1%であり、とても稀ですが、米国の疫学調査によると、肺によらず全身諸臓器のNETは増加傾向のようです(Dasari A, et al. JAMA Oncol. 2017;3:1335-1342)。

ところで、カルチノイドといえば、カルチノイド症候群が有名ですが、肺原発の場合は、90%以上が非機能性、つまり、ホルモン産生性はありません。

膵・消化管の機能性のNETに対しては、ソマトスタチンアナログの有効性が示されていますが、前述したように、肺原発のカルチノイドは非機能性が多く、切除不能な肺カルチノイドに対する有効な治療法はこれまでありませんでした。

しかし、RADIANT-4試験(Yao JC, et al. Lancet. 2016;387:968-977)で、primary endpointであるPFS中央値の有意な延長効果(エベロリムス群 11.01ヵ月 vs プラセボ群 3.91ヵ月,  HR 0.48 95%CI; 0.35-0.67; p<0.001)が示され、2016年8月より、カルチノイドに対してアフィニトール®(エベロリムス)が適応となりました。(注釈 ※1, 2)

※1:ちなみに、RADIANT-4試験におけるsecondary endpointの結果で、ORR(CR+PR)=2.0%、DCR(CR+PR+SD)=82.4%  …ほとんどがSDなのですね。

※2:アフィニトール自体は、既に膵NETに対する有効性が示されており(RADIANT-3試験, Yao JC, et al. N Engl J Med. 2011;364-514-523)、本邦では、2011年12月より膵NETに対して適応となっていました。


アフィニトール®は、mTOR活性を阻害することで、細胞の分裂・増殖を抑制し抗腫瘍効果を発揮します。また、血管新生を抑制し、血管内皮細胞の増殖を阻害する間接的な作用も有しているようです。

副作用は、mTOR阻害剤に特徴的な口内炎(62.9%)、下痢(31.2%)、感染症(29.2%)、間質性肺炎(15.8%) 、高血糖(10.4%)などがありますが、いずれも重篤ものは少なく綿密なフォローによりコントロールされうるものと考えます。最も頻度の多い口内炎については、口腔ケアを行うことで重症化を防ぐことが出来るとされます。

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