2017-01-29

口すぼめ呼吸 のエビデンス

こんなことをやっている場合ではないのですが(ERSの抄録締め切りが…)、ついつい気になって調べてみました。意外と奥が深いのですね。

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COPDでは、肺胞の過膨張と肺弾性の低下により、呼気時の気道閉塞とそれによるair trappingが生じています。口すぼめ呼吸は、呼気流速の減速と陽圧効果により、気道虚脱を防止することが出来ます。原始的ですが、簡便ですぐにでも試せる方法ですので、労作時の呼吸困難を訴えるCOPD患者さんには、是非ともマスターしてもらいたい呼吸法の一つです。日常の動作と同調して口すぼめ呼吸が自然に行えるようになるとよいですね。たまに、こちらが指導する前に自然に身につけておられる患者さんもいて、おぉ!と感心することもありますね。

ちなみに、英語では、「pursed-lips breathing: PLB」と言うようです。

ところで、上述したように口すぼめ呼吸で陽圧効果がある(auto-PEEPがかかる)と言われていますが、具体的にどれくらいの効果が得られるのでしょうか?

「マクギーの身体診断学」にちゃんと書かれていました。

「口唇内外の圧格差 2-4cmH₂O程度 がかかることで、呼気時の気道虚脱の減少につながる」

その結果、呼気終末の残気量が減り、さらに

1回換気量の増加:250ml程度から800mlへ
呼吸回数の減少:約20/minから12-15/minへ 最大40%程度
PCO₂の減少:5%程度
SpO₂の増加:3%程度

このように、各種パラメーターの改善につながります。

参照)
Chest 1992;101:75-78
Am Rev Respir Dis 1966;93:100-106
J Appl Pysiol 1970;28:784-789

運動時に生じるdynamic hyperinflationも改善してくれるのではないかと、その効果に期待したいところですが…。

ISWT施行時に口すぼめ呼吸を併用することで、呼吸回数が6.2回減少、運動終了後の回復時間を24.9秒 短縮させることができた。しかし、運動時の呼吸困難の程度と運動耐容能には影響しなかった。
(Chron Respir Dis 2005;2(2):67-72)

ESWT施行時に口すぼめ呼吸を併用することで、平均で37秒長く歩行出来(p<0.01)、SPO2低下も平均で1.2%抑制された。しかし呼吸困難の程度と下肢疲労には差がなかった。
(Clin Rehabil 2008;22(8):675-83)

6MWT施行時に口すぼめ呼吸を併用することで、34.9±26.4m(p=0.002)歩行距離が延び、運動後の呼吸数が4.4±2.8回(p=0.003)減少した。呼吸困難のVASには差がなかった。
(Chron Respir Dis 2013;10(1):5-10)

と、ISWT、ESWT、6MWTそれぞれに、上記のような小規模RCTが行われていますが、呼吸困難の程度は変わらずで、運動耐容能については一定の見解は出てないようですね。
また、肺機能によるものなのかもはっきりしませんが、口すぼめ呼吸のresponderとnon-responderがいるようです。



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