2020-05-10

M. abscessusとM. massilienseの治療


M. abscessus


M. abscessusは、迅速発育菌の1菌種である。

他の迅速発育菌としては、M.fortuitumM.chelonaeなどがある。

M. abscessusは、MAC症と同様の臨床所見を呈する。(中年以降の基礎疾患のない非喫煙女性に多く発症し、結節・気管支拡張型の画像所見)

MAC以上に難治で予後不良。



治療

初期にはin vitroでマクロライド(CAM or AZM)に感受性ありと判断されても、マクロライド誘導耐性に関与するerm遺伝子を発現しているため、マクロライド単剤では耐性化が引き起こされる。

専門家の中でもM. abscessusの治療について一定のコンセンサスはなく、薬剤感受性を参考に治療選択を行うしかないが、MICについても明確な基準がないため、薬剤感受性をもとに治療を行ったとしても治療効果を期待できるとは限らない。



初期治療

注射剤による多剤併用療法を8-12週間行う↓


AMK(アミカシン)静注 + in vitroで感受性のある薬剤(CFX(セフォキシチン), IPM(イミペネム), TGC(チゲサイクリン), LZD(リネゾリド)のいずれか2剤) を使用



※しかし本邦では適応外の薬剤や使用方法あり



維持治療


忍容性があれば初期治療を可能な限り継続する。

肺病変については、喀痰の培養が陰性化してから少なくとも12か月間の治療を行う。皮膚軟部組織感染や骨病変、播種性の病変に対しては、少なくとも6-12か月間治療を行う。



その他の選択肢として、

    経口薬にスイッチする(しかし感受性の保たれる経口薬剤は限られる)
LZD, TZD(
テジゾリド), Clofazimine(クロファジミン), MFLX(モキシフロキサシン),bedaquiline(ベダキリン)など

②初期治療後、一旦治療を終了し、再燃時に初期治療を繰り返す。


これらの治療にも関わらず排菌が継続するようであれば、病変の切除を検討する。



※繰り返すが、上記には、本邦で適応外の薬剤や使用方法あり、倉島先生からは
CAM, FRPM
併用を基本とし、AMK, KM, STFX, MFLXの併用を行う方法が提唱されている。





M. abscessus subspecies massiliense



M. abscessus はさらに、3つのsubspeciesに細分類されその1つがM. massilienseである。マクロライドの感受性において大きく異なるため、これらを区別することは重要であるM. massilienseerm遺伝子発現がみられないため、NTM治療のキードラックであるマクロライドの効果が期待できる。



治療

マクロライドをキードラッグとした併用療法を行う↓
AZM 250-500mg/day + in vitroで感受性のある薬剤(AMK, CFX, IPM, TGC, LZD)を使用



臨床的な効果が見られれば、マクロライドとLZD等の経口薬の併用に切り替えてもよい。



肺病変については、喀痰の培養が陰性化してから少なくとも12か月間の治療を行う。皮膚軟部組織感染や骨病変、播種性の病変に対しては、少なくとも6-12か月間治療を行う。(治療期間については、M. abscessusと同様)



※肺病変に対して、マクロライド+AMKCFXIPM2週間使用し、マクロライド単剤に切り替えた症例について、全例で症状の軽快を認めており、91%に画像の改善、12か月後の菌陰性化を認め、マクロライド単剤の使用は有効であると考えられた。しかしその一方で7%に細菌学的な再燃を認めており(Chest. 2016;150(6):1211. Epub 2016 May 7)、耐性菌の出現の懸念あり、推奨されない。





参考:up to date (Rapidly growing mycobacterial infections: Mycobacteria abscessus, chelonae, and fortuitum)を翻訳、抜粋。


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