2015-04-04

奥深き「カビ」の世界

4月3日、千葉大学 真菌医学研究センターの亀井克彦先生の講演を聴講させていただく機会があったので少し掘り下げて報告します。

テーマは、「真菌症診療の現状と問題点」。 まさにup-to-date!
...そしてdeepな内容でした。

我々、呼吸器内科医とカビとは切っても切り離せない関係。
慢性呼吸器疾患の合併症としてよく問題となるのがアスペルギルス症です。
しかし、なかなか治らないんですね、これが。
しかも、その症例数が増えているというからさらに頭痛いところです。

で、まずは、診断。ちゃんとできてますか?ということ。

一口にアスペルギルス属といっても、様々な種類がありますが、まず有名なのがAspergillus fumigatus。その他に、Aspergillus flavusAspergillus terreusAspergillus nidulansAspergillus nigar等が知られています。我々が日常臨床で出会う原因菌の大半がAspergillus fumigatusですが、最近は、Aspergillus fumigatusの隠蔽菌というのがhot topicsのようです。隠蔽菌というのは、一見Aspergillus fumigatusのように見えるけど、実は別の菌、という意味です。Aspergillus lentulusというようで数%いるようです。厄介なことに、このAspergillus lentulusは、多くの抗真菌薬に耐性を有しているようです。しかし、市中病院の細菌室でAspergillus lentulusを同定することは難しく専門機関に検体を送らなければ分からないということでした。

しかも、Aspergillusにおいても複数同時感染や、治療中に菌が入れ替わってしまう可能性もあるということなので、薬剤が無効な時に再度検体を確認する必要がありそうです。


また、耐性菌についても考慮が必要です。

Aspergillusのアゾール系抗真菌薬への獲得耐性についても問題視されています。
点滴の抗真菌薬はポリエン系、キャンディン系、アゾール系と3系統そろっていますが、経口剤となると、アゾール系(ITCZ、VRCZ)しかありません。長く付き合わなければならないアスペルギルス症にとって、アゾール耐性化はかなりの痛手です。早く、他系統の経口剤も世に出てもらいたいところです。

しかしながら、アスペルギルス症を発症する時点で免疫抑制状態、もしくは低栄養など何らかの問題を抱えていることがあるため、上記のことをすべて考慮したとしても、やっぱり、治療が難しいのが現状です。しかし、治療を見直す糸口にはなりそうです。

最後に...。

トリビア的な話ですが、日本人は味噌汁を飲むので、欧米人よりもβ-Dグルカンが高いかも...とのことでした。私も世の中の流れにのって塩麹にはまった時期がありましたので、当時はβ-Dグルカンが高かったのでしょうか? 麹菌はAspergillus oryzaeという名前でしたね。

雨で花見が中止となってしまいましたが、大変有意義な時間が過ごせました。

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