2016-02-07

分類不能を分別可能に

この数日はハードスケジュールでした。

2月4日 夕方から神奈川循環器呼吸器病センターの院内CRPカンファレンスに参加させて頂き、
2月5日 始発の新幹線で大垣に戻り、
2月6日 東海びまん研に参加。

金曜に新入院がなかったことがせめてもの救いでした。

ところで、思ったこととしては、昨年末の大阪びまん研から何かと話題に挙がることの多い「unclassifiable IIPs(分類不能型IIPs)」 をなんとかせねば。
ということと、それに関連して(即ち、unclassifiableと言うために)
chronic HP(CHP:慢性過敏性肺臓炎)の診断をいかに突き詰めるか。
膠原病もどき、すなわちautoimmune flavorのあるILDをどう扱うか、です。

2013年のATS/ERSのIIPs classificationのup dateにて、unclassifiable IIPsは大きく取り上げられるようになりました↓ 。
実際、びまん研で提示される症例には、最終診断 unclassifiable となる症例が多いです(悩ましい症例を持ち寄ることによる「カンファレンスバイアス」でしょうか?)。


TABLE 1. REVISED AMERICAN THORACIC SOCIETY/EUROPEAN RESPIRATORY SOCIETY CLASSIFICATION OF IDIOPATHIC INTERSTITIAL PNEUMONIAS: MULTIDISCIPLINARY DIAGNOSES
Major idiopathic interstitial pneumonias
 Idiopathic pulmonary fibrosis
 Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia
 Respiratory bronchiolitis–interstitial lung disease
 Desquamative interstitial pneumonia
 Cryptogenic organizing pneumonia
 Acute interstitial pneumonia
Rare idiopathic interstitial pneumonias
 Idiopathic lymphoid interstitial pneumonia
 Idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis
Unclassifiable idiopathic interstitial pneumonias*
*Causes of unclassifiable idiopathic interstitial pneumonia include (1) inadequate clinical, radiologic, or pathologic data and (2) major discordance between clinical, radiologic, and pathologic findings that may occur in the following situations: (a) previous therapy resulting in substantial alteration of radiologic or histologic findings (e.g., biopsy of desquamative interstitial pneumonia after steroid therapy, which shows only residual nonspecific interstitial pneumonia [153]); (b) new entity, or unusual variant of recognized entity, not adequately characterized by the current American Thoracic Society/European Respiratory Society classification (e.g., variant of organizing pneumonia with supervening fibrosis) (79); and (c) multiple high-resolution computed tomography and/or pathologic patterns that may be encountered in patients with idiopathic interstitial pneumonia.


画像診断やVATSをすればある程度etiologyを類推することは出来ます(専門の先生方のお力を借りて)。しかし、CTと病理、あるいは、臨床データの相互に、discrepancyがある時に診断がつかないという事態に陥ります。例えば、画像や病理でCHPを疑うが、BALでリンパ球が上がっていなかったり、明らかな抗原暴露が特定出来ない時。他には、同じ症例で例えば、膠原病の血清学的マーカーが陽性だった場合に、それは、診断名をCHPとすることは出来ず、unclassfiableになるわけです。

ただし、CHPについては、全例抗原が同定できるわけではないでしょうし、主治医が抗原特定のためにどれだけ労力と時間を注ぐかによっても診断は変わってくると思います。膠原病については、時間経過とともに何らかの症状が出現し、診断を満たすようになるかもしれないので、ワンポイントで判断出来ないということになります。

こういった症例を無理矢理IPFとしてしまうことで、治療の機会を奪うことにもなりかねないですし、今後立ち止まって診断を振り返る機会もなくしてしまいそうなので、unclassifiable IIPsとして扱い、治療は個別に考えるというのは、疾患に向き合う上で大切なことだと思います。 

尚、治療の拠り所になるのは、進行のスピードであったり、症状であったり、画像や病理にて可逆性が期待される病変がどれだけ存在するかという点です。臨床医は、それらを総合判断して、ステロイド・免疫抑制薬を使用するのか、抗線維化薬で治療をするのか決めることになりなります。「unclassifiable ILD」としての予後を示した論文はありますが、さらに細かい分類での予後や、治療ごとの予後について示したデータはありません。

我々に出来ることは、まずは、どうしてunclassifiableに分類されたかの理由づけをしっかりしておくこと、経過とともに振り返りを行うこと。それにより、いずれ交通整理が出来てくるのだと思います。


ところで…最後に一枚写真を。
神奈川循環器呼吸器病センターに辿り着くには、坂を登らなければならず、患者さんにも、びまん性肺疾患をやってる呼吸器科医にも有名な坂のようです。

入り口にようやく着いたけど、道半ば、まだまだこれから、不安と期待の入り混じる、まさにunclassifiableな心境ですね。(夕方なのに暗くて何がなんだか…。)


 




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