しかし、その分、呼気NO値に頭を悩まされることもあります。
今回のClinical Questionはこれです。
『喘息診療において、吸入ステロイド使用中にも関わらず呼気NO高値(呼気NO>50ppb)が持続する時に何を考えるか?』
・症状が残存している場合:
以下のことを考えましょう。
①
まず確認すべきは、服薬アドヒアランス不良、吸入手技不良
(これは喘息診療の基本中の基本)
(これは喘息診療の基本中の基本)
②
吸入ステロイドの用量不足
(ステップダウンを行った後に注意が必要)
(ステップダウンを行った後に注意が必要)
③
持続的な抗原暴露
④
副鼻腔炎の存在
⑤
過去喫煙
⑥
末梢血好酸球数増多
(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の存在にも注意)
(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の存在にも注意)
⑦
慢性好酸球性肺炎の潜在
⑧
遺伝的素因の関与
(Th2炎症のシグナル伝達に関わるIL-4受容体α鎖の遺伝子多型など)
(Th2炎症のシグナル伝達に関わるIL-4受容体α鎖の遺伝子多型など)
※④~⑥は、Matsunaga K et al. Clin Exp Allergy. 2012;42:775-81より
・症状がなく、喘息自体も落ち着いている場合:
ある一定の割合で、コントロール良好な患者の中に呼気NO高値の症例がいるのは事実です。以前ある講演で(FENO>40ppbをcut offとしたとき)30%程度と伺ったことがあります。確立された解釈はないそうですが、下記①~③の背景がある他(根拠は不明確でした)、④の関与も知られているようです。
① 男性
② 高身長
③ アトピー素因
④ 構成型NOS(cNOS)の関与
(cNOSをコードするNOS1遺伝子の反復配列多型の存在により、ステロイドの関与を受けないcNOSの発現を生じ、呼気NO値に影響する可能性がある)
(cNOSをコードするNOS1遺伝子の反復配列多型の存在により、ステロイドの関与を受けないcNOSの発現を生じ、呼気NO値に影響する可能性がある)
ただし、ここで注意すべきは、「症状がない=コントロール良好」ではないので、真の意味でコントロール良好かを確認しましょう。
その上で、無症状のコントロール良好な症例で呼気NO高値を呈した時、吸入ステロイドをステップダウンするかどうかは本当に迷います。もしも実際にステップダウンするのなら、症状悪化しうることに留意しながら慎重にフォローをしましょう。
参考文献:
・An official STS clinical practice guideline:
interpretation of exhaled nitric oxide levels(FENO) for clinical applications.
Am J Respir Crit Care Med. 2011;184:602-15
Table4, 5
・呼気一酸化窒素(NO)測定ハンドブック作成委員会, 日本呼吸器学会肺生理専門委員会. 呼気一酸化窒素(NO)測定ハンドブック. メディカルレビュー社. 2018