先月、アレルギー性気管支肺真菌症研究班による、「アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き」が出版され、新しくアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の診断基準が示されました。
そもそも、これまでは、ABPAの診断基準はあったものの、複数の診断基準が乱立しておりどれを使えばいいの?と混乱状態でした。昨年10月に、ブログ内で、ABPAの診断基準の比較とまとめを紹介しましたが、で、結局どうなのよ?という結論はないままでした、すみません。さらには、言われてみれば、アスペルギルス以外の真菌によって発症するABPMの診断基準ってないよねー。ということで、この度、はれてABPAを含むABPMとしての診断基準が示され、この界隈が少しだけスッキリしましたでしょうか。本邦限定版ですが。
新しいABPMの臨床診断基準は、以下の10項目からなります。
(6項目以上満たす場合にABPMと診断する)
①喘息の既往あるいは喘息様症状あり
②末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/μL
②末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/μL
③血清総IgE値(ピーク時)≧417IU/mL
④糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
⑤糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
⑥喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
⑦粘液栓内の糸状菌染色陽性
⑧CTで中枢性気管支拡張
⑨粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
⑩CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)
注釈1:
④⑤⑥は同じ属の糸状菌について陽性の項目のみ合算できる。つまり、Aspergillus fumigatusのIgEと沈降抗体が陽性だが、培養ではペニシリウム属が検出された場合は2項目陽性、と判定。
注釈2:
⑦の粘液栓検体が得られず、⑤項目を満たしている場合には、気管支鏡検査などで粘液栓を採取するように試みる。困難な場合は、「ABPM疑い」と判定する。
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上記の診断基準は、RosenbergやGreenbergerらの診断基準やISHAMの診断基準を併せたような形になります。ただし、日本人のABPMの臨床像に合わせて作成してあるので、既存の診断基準よりも感度特異度は優れています(感度95%、特異度97%)。
細かなところをみていくと、新しい診断基準では、好酸球数やIgE値のカットオフを明確にしており、特にIgE値については、日本人で低値を示す症例があることも踏まえ、ISHAMよりも低い値の417IU/mLを採用しています。
また、ISHAMの流れを引き継ぎ、即時型皮膚反応は特異的IgE検査で代用可とされました。実臨床で皮内テスト、プリックテストを行う機会はめったにないので(というか当院には試薬を置いておらず施行できません)これはありがたいです。しかし、(特異的IgG抗体にも共通して言えることですが)交差反応性のために特定の真菌に特異的ではないかもしれないことに注意が必要です。例えば、わが国で多い、Schizophyllum commune(スエヒロタケ)によるABPM患者でも、交差反応によりAspergillus fumigatus特異的IgEが陽性になることがあるようです。また、スエヒロタケの特異的IgEは保険診療内で測定出来ないことも問題点の一つで、結局アスペルギルス以外の真菌に対する診断には苦労しそうです。
画像所見については、⑧-⑩の3項目を割いており、より具体的になりました。中枢性気管支拡張の所見は、早期や軽症例で認められないこともあるので、Rosenbergの基準のように必須項目とはならず。また、今回初めて、HAMの存在が診断基準に組み入れられました。HAMとは、粘液栓の中でも、特に高吸収値を呈するもので(傍脊椎筋と比較し高吸収、CT値で70HU以上)、粘液栓の約半数にみられ、より特異的な所見です。高吸収になる理由は、粘液中のカルシウムや金属イオンが濃縮されるためで、スエヒロタケ検出例や難治例に比較的認められるとされています。
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駆け足で、新しい診断基準を見てみました。より実臨床に即した形で使いやすいのではないかと思いますので、参考にしてください。
参考文献、引用:
「アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き」
参考文献、引用:
「アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き」
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