2015-03-02

レジオネラ肺炎?

2月21日、肺学会の中部支部会が岐阜にて開催されました。
静岡がんセンターの先生の講演もあったようですが、
私自身は、仕事で参加出来ず残念。

当院からも、後期レジデントの先生に症例発表してもらいました。
重症患者さんの緊急対応等に追われる中での発表準備で大変だったと思います。
発表を終え、ひと息つく間もなく、早速、病棟に戻りまた仕事。
本当に頭が下がります。お疲れさまでした!

ところで、レジデントの先生が担当していたその重症患者さんは、というと、
いつもの市中肺炎…と思ったら、初期治療(βラクタム系抗菌薬)が無効で肺炎像がどんどん悪化…。
これってレジオネラ??

...結局、確定診断は得られなかったものの、キノロン追加で良くなったわけですが。

確かに、こういうシチュエーションって日常臨床では遭遇すると思うんですよね。ということで、これを機に、レジオネラをいつ疑って、いつどのようにカバーすべきか、について少しまとめてみました。


①臨床情報:

免疫抑制患者、大酒家のみならず、高齢者もリスクとなるため、高齢者肺炎=誤嚥性肺炎の決め打ちではなく、環境因子(温泉、銭湯、貯水タンクなど)を積極的に問診しにいくことが大切。下痢、神経・精神症状は有名で肺炎が先に分かっている場合には、レジオネラを疑う根拠にはなると思いますが、それらの症状が主訴で来院し呼吸器症状が全くない場合は、肺炎そのものに気づくのが遅れます。

参考:レジオネラの臨床的予測因子

体温>39.4℃、痰がない、Na<133mEq/L、LDH>255 IU/L、CRP>18.7mg/d、Plt<17.1万のうち、4項目以上合致すればレジオネラ肺炎の確率は66%(BMC Pulm Med. 2009;9:4-7)

②喀痰検査:

良質な痰だが菌が見えない場合、細胞内寄生菌であるレジオネラを疑い、ヒメネス染色(Gimenez stain)を行うきっかけになる。ちなみに、ヒメネス染色は、レジオネラに特異的なものではないが、マクロファージなどの細胞質内に赤色に染まる桿菌を認めればレジオネラ菌である可能性が高い。ヒメネス染色の陽性率は、喀痰で18.2%(2/11例)、BALFで40%(6/15例)。(日本微生物学会雑誌 2012;22(1):28-34)。 

③尿中抗原:

血清型1しか検出出来ない。しかし、村上らの報告によると、200例のレジオネラ症のうち、67.4%がL. pneumophila、そのうち 43.5%が血清型1(モダンメディア 2004;50(4):86-91) であることから有用性は高い。血清型1に対する感度は74% 特異度は99.1%(Chest 2009;136(6):1576-1585)。
発症後、数日で陽性となり、2〜4週間続く。治療後にも陽性が持続するため、注意が必要。

④LAMP法:

レジオネラ菌属の16S rRNAを検出する方法。血清型1以外の菌種も検出可能。
Legionella spp.全体の感度は100% 特異度は91.59%、L. pneumophilaにおいての感度は100% 特異度は93.3%(Appl Microbiol Biotechnol 2011;92(1):179-87)と有用。当院ではまだ行えませんが。

⑤培養検査:

診断のGold Standard。ただし感度は低い。疑うなら、細菌検査室にお願いしてBCYEα培養を行ってもらう。発育には、少なくとも3日以上、長くて10日ほどかかる。

⑥治療:

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 呼吸器感染症編 によると、

第一選択薬
LVFX 500mg q24hr
CPFX 300mg q8-12hr(添付文書ではmax 600mg/day)
PZFX 500〜1000mg q12hr
AZM 500mg q24hr    となっており、

第二選択薬
EMの使用、しかもRFPと併用することが望ましいとなっている。
(EMは基本的に単剤では使用しないし、実臨床では副作用や相互作用の観点からも使用される場面は少ないと思われる。)

では、上記の第一選択薬の中での優劣があるかというと、これがなかなか難しい。そもそも、大規模なランダム化比較試験が行われていない(行えない)。Clin Microbio Infect 2006;12:25-30にIn vitroのデータのreviewとともに申し訳程度に紹介されていたのは、3つの観察研究。total 458例のレジオネラ症においてキノロン系薬使用群の方がマクロライド系薬使用群よりも、解熱に至るまでの期間及び入院日数が短かったとされる(CID 2005;40:800-806, CID 2005;40:794-799, Chest 2005;128:1401-1405)。ただし、注意しなければならないのは、ここでいうキノロンは多くはLVFXのことであり、さらに、マクロライドは、AZM以外の薬剤(EM or CAM)が使用されており、本当の意味でのキノロン vs マクロライドの効果は分からなかった。しかし、ここにきてAZMとキノロンの比較検討がなされ、単施設後ろ向き研究(Pharmacy and therapeutics 2014;39(3):203-205)及び、多施設後ろ向き研究(CID 2015;Feb 25.pii:civ157.[Epub ahead of print])などで、臨床効果は同等とされた。一方、キノロンに関しては、本邦ではLVFX 500mgまでですが、欧米ではLVFX 750mg 5日間 のhigh dose short course therapyという使い方もあるよう(Chest 2004;125:2135-9)。

しかしながら、レジオネラ重症例では、どっちを使用するかで悩むよりは、Med Intensiva 2013;37:320-326にもあるように、結局併用した方が効果も得られますし無難なのかもしれません。

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