2019-12-01

呼吸ケアリハビリテーション学会 in 名古屋

前回の投稿と前後しますが、11月11-12日にケアリハ学会が開催されました。
近所だったので参加してきました。


ケアリハといえばCOPD。
COPDといえば今、巷を騒がせているACP(Advance care planning; 愛称 人生会議)。

「患者・家族・医療者との話し合いを通じて、患者の価値観や人生観、死生観を明らかにし、これからの治療やケアの選好を明確にすること」

言葉やイメージがひとり歩きしている感はありますが、
でも、ACPは患者さんや医療者にとって、大切なことなんです。

今回の学会では、当院の慢性呼吸器疾患看護認定看護師の斎藤さんがCOPD患者さんの事前指示の認識に関するアンケート結果のまとめを発表してくれました。
増悪歴のあるCOPD患者さんであっても、事前指示については考えたことのない方が多かったという結果でした。

増悪を起こしたCOPD患者さんは、増悪を乗り切った後に次の増悪に備えて、ACPを行い、事前指示についても話し合っておくのが望ましいとされます。
「ACP=事前指示」ではありませんが、増悪時に人工呼吸管理を要する状態になりうる、というCOPDの疾患の特性上、ACPを行う中で、事前指示は避けては通れない事項と考えます。

当科は、ACPをいつ、誰と、どのようにして行うのか模索中の段階ですが、患者さんや患者さん家族にとって、医療者と話し合った結果、より良く生きることが出来るような、そんな話し合いの場をもつことが理想です。


2019-11-22

第116回 呼吸器学会 東海地方会 in 大垣 開催

11月16-17日に、ここ大垣の地で、呼吸器学会 東海地方会が行われました。会長は当科の主任部長の安藤先生でした。当院の主催は10何年ぶりだそうです。

当院からは後期研修医の舩坂先生に「傍腫瘍性神経症候群を合併した小細胞癌の1例」、坂野先生に「巨大軟骨肉腫の1例」を発表してもらいました。まだ学会発表の経験は浅いものの、質問にも的確に答えており、頼もしく感じました。

肺生理講演会では、東京医療センター 呼吸器科の小山田 吉孝 先生に呼吸機能検査結果の解釈の仕方を症例を交えてご紹介いただきました。

フローボリューム曲線の横軸をIC(最大吸気量;IRV+TV)、ERV(呼気予備量)として捉える解釈方法は、限られた外来の時間の中で、感覚的に、改善、悪化を認識する方法として、有用ですね。また、中枢性の可動性のない気道閉塞を来した(T-tube挿入症例)大変貴重なフローボリューム曲線を提示して頂きました。気道閉塞パターンのフローボリューム曲線を見るときは、中枢か末梢か、可動性があるか可動性がないか、の2点に着目することが大切であることを学びました。

その他、男女共同参画講演で岐阜大学医学部付属地域医療医学センター の村上 啓雄 先生に、岐阜県医師会の女性医師支援の取り組みを紹介して頂きました。個人的には、子供が親の職場を見学して職業体験を出来るサマースクールに興味を持ちました。親の仕事を子供に理解してもらった上で仕事を続けていくのが理想ですね。

ともかく、遠方で、交通の便が悪いにも関わらずたくさんの東海4県の先生方にお越し頂きました。
大きなトラブルなく終了出来き、手伝ってくれました研修医の先生、呼吸器病棟の看護師さん、MEさんやPTさんたちにはとても感謝しています。

2019-10-03

肺癌における副腎転移と副腎不全


呼吸器内科医として、というか内科医として、こんな疾患も診れなければなりませんね。



副腎転移による副腎不全



 肺癌患者で副腎転移を有する症例は比較的多く、時に、疼痛や貧血を伴う副腎出血を合併することもあります。剖検例ですが、肺癌の31-43%に副腎転移を合併したとの報告があります。このように副腎転移自体の頻度は多いにも関わらず、副腎不全を生じた症例に出会うことは稀です(実際、副腎不全の原因の中で悪性腫瘍の転移によるものは1.1)。その理由として、仮に副腎転移が生じても、副腎の90%以上の破壊が起こって初めてコルチゾール分泌能の低下を来すとされており、副腎不全が顕在化しづらいためと考えられます。

また、副腎不全に伴う症状は、倦怠感や体重減少、食欲不振など非特異的であるため、積極的に疑わない限りは、癌に伴う諸症状として見逃されている可能性もあります。

以下、診断と治療について簡単にまとめてみました。


・診断の流れ



 早朝コルチゾール 正常~低値(<18μg/dl未満)

 ACTH 正常~高値



 であることが多く、可能であればrapid ACTH負荷試験を行うことが望ましい。


慢性副腎不全の場合、生理的補充量をヒドロコルチゾン(コートリル®)により投与する。


 補充量の目安:コルチゾールの1日あたりの産生量は5-10mg/m2/day

          ↓

 処方例:コートリル® 10-20mg/day   分2なら朝:夕=21 もしくは31 分3なら朝:昼:夕=32:1 (より生理的変動に近い)



 シックデイ時:クリーゼ予防のため、常用量の2-3倍の補充を行う


急性副腎不全(副腎クリーゼ)を発症した場合は、グルココルチコイドだけでなくミネラルコルチコイドの喪失、体液量の減少、カテコラミン合成と作用の低下などがみられるため、循環動態を維持するために1000ml/hrで生食投与を行いつつ(症例により適宜調整)、ヒドロコルチゾンの補充を行う。

 補充量の目安:ヒドロコルチゾン100IV後、5%Glu100-200mgのヒドロコルチゾンを混注し24hrかけて持続投与。(あるいはヒドロコルチゾン25-50mg6hr毎に投与)

(Jung C, et al. Med J Aust 188: 409-413, 2008)



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※参考文献:日内会誌 105; 640-646, 2016




2019-09-10

尿毒症性胸膜炎 まとめ

過去にで行われた局所麻下胸腔鏡施行例を見直していたところ、除外診的にこの疾患と診された症例が意外に多いことが判明しました。疾患名を聞くと、ああそうか、となんとなく理解したようなになりますが、知っているようで知らない疾患だったので、簡にまとめておこうと思います。

尿毒症性胸膜炎 Uremic Pleuritis

長期透析患者の3.2-16%にみられる。

機序:
尿毒症に伴う凝固因子、血小板、血管壁などの機能障害
リンや尿毒素物質などの小分子毒素
免疫複合体の沈着による炎症で胸膜の血管透過性亢進
透析に伴う抗凝固使用による胸膜の易出血性 
 などが考えられているが不明な点も多い。

基準はなく、除外診
特に透析患者においては、結核の除外は重要。
慢性腎不全のいずれの病期においても生じうる。

胸水の性は、肉眼的には淡血性~血性で、出性胸水。
胸腔鏡では、肉眼的に壁側胸膜の白色胸膜肥厚、フィブリン生を認める。
病理組織像は、線維素性胸膜炎。

治療:
透析しく設定すると胸水コントロれたという報告と特にがなかったという報告と両者ある。
一般的には、体液量の調整をしっかり行い、かつ、胸水の穿刺排液を行うことで80%の患者は良好な予後が得られる。また、透析中の抗凝固(ヘパリン→メシル酸ナファモスタット)を行った症例や胸膜癒着術を施行した症例もある。
・ただし、胸水が貯留して長期経過すると、胸水ドレナージしても肺の再膨張が得られず再貯留する。
難治性の場合、ステロイドが奏功したとする報告も。(ステロイドが胸膜の炎症を改善させ、血管透過性が改善し胸水が循環血漿中に移行した) 他には、胸膜剝皮術が奏功したという報告もある。

2019-08-20

抗結核薬の髄液移行


結核性髄膜炎の治療に携わることがあったので、抗結核薬の髄液移行について覚書としてまとめておきます。以下、日本神経治療学会からの標準的神経治療;結核性髄膜炎(標準治療 2015;32(4):513-532)より抜粋です。



結核性髄膜炎の標準治療は2HREZ+10HRです。

しかし、薬剤アレルギーや肝障害などの副作用が生じた場合、あるいは耐性結核の場合には、代替薬を用いることがあります。特に、INHRFPが使えない場合は、second-line drugのうち、出来るだけ髄液移行率のよいLVFXの使用が推奨されています。



参考までに各薬剤の髄液移行率を表にしました。




薬剤名
髄液移行率
First-line drugs(a)
RFP
10-20

RBT
本文中に記載なし

INH
80-90

PZA
90-100%
First-line drugs(b)
SM
10-20%

EB
20-30%
Second-line drugs
LVFX
70-80%

KM
10-20%

TH
80-90%

EVM
本文中に記載なし

PAS
No deta

CS
80-90%
Others
LZD
40-70%



多剤耐性肺結核に適応のあるデラマニドは肺外結核に適応なく、髄液移行性についてもデータがないため使用は出来ないことに注意が必要です。

2019-07-21

PeriView FLEX


気管支鏡検査で、EBUS-GS使用下に末梢病変へアプローチする際にあると便利なデバイスが発売された(ていた)ので紹介します。

「PeriViewFLEX」 Olympusの商品で、末梢用の吸引生検針です。


当院では、末梢病変用のガイドシースは細径(2.0mm)を使用しているのですが、本製品は1.5mm径であり、細径ガイドシースも通ります。また、針がらせん状のレーザーカットだかで、しなるため、より末梢病変へ到達しやすくなるのではないでしょうか。さらに、針は、21Gなのでしっかり検体採取出来そうです。

実際、どのような場面で使用するのがよいかというと、radial EBUSでどうしてもadjacent toからwithinにならない病変に対して、あるいは、re-biopsyなどで組織をしっかり採取したい症例などがよい適応でしょうか。

さっそく試してみたいですね。

ちなみに、You Tubeで使用方法の解説動画があります(ただし英語…)。

2019-07-08

ABPM 診断基準 まとめ up date


先月、アレルギー性気管支肺真菌症研究班による、「アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き」が出版され、新しくアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の診断基準が示されました。

そもそも、これまでは、ABPAの診断基準はあったものの、複数の診断基準が乱立しておりどれを使えばいいの?と混乱状態でした。昨年10月に、ブログ内で、ABPAの診断基準の比較とまとめを紹介しましたが、で、結局どうなのよ?という結論はないままでした、すみません。さらには、言われてみれば、アスペルギルス以外の真菌によって発症するABPMの診断基準ってないよねー。ということで、この度、はれてABPAを含むABPMとしての診断基準が示され、この界隈が少しだけスッキリしましたでしょうか。本邦限定版ですが。




新しいABPMの臨床診断基準は、以下の10項目からなります。
(6項目以上満たす場合にABPMと診断する)


喘息の既往あるいは喘息様症状あり
末梢血好酸球数(ピーク時)500/μL
血清総IgE(ピーク時)417IU/L
糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
粘液栓内の糸状菌染色陽性
CTで中枢性気管支拡張
粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)

注釈1
④⑤⑥は同じ属の糸状菌について陽性の項目のみ合算できる。つまり、Aspergillus fumigatusIgEと沈降抗体が陽性だが、培養ではペニシリウム属が検出された場合は2項目陽性、と判定。

注釈2
の粘液栓検体が得られず、項目を満たしている場合には、気管支鏡検査などで粘液栓を採取するように試みる。困難な場合は、「ABPM疑い」と判定する。




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上記の診断基準は、RosenbergGreenbergerらの診断基準やISHAMの診断基準を併せたような形になります。ただし、日本人のABPMの臨床像に合わせて作成してあるので、既存の診断基準よりも感度特異度は優れています(感度95%、特異度97%)

細かなところをみていくと、新しい診断基準では、好酸球数やIgE値のカットオフを明確にしており、特にIgE値については、日本人で低値を示す症例があることも踏まえ、ISHAMよりも低い値の417IU/mLを採用しています。

また、ISHAMの流れを引き継ぎ、即時型皮膚反応は特異的IgE検査で代用可とされました。実臨床で皮内テスト、プリックテストを行う機会はめったにないので(というか当院には試薬を置いておらず施行できません)これはありがたいです。しかし、(特異的IgG抗体にも共通して言えることですが)交差反応性のために特定の真菌に特異的ではないかもしれないことに注意が必要です。例えば、わが国で多い、Schizophyllum commune(スエヒロタケ)によるABPM患者でも、交差反応によりAspergillus fumigatus特異的IgEが陽性になることがあるようです。また、スエヒロタケの特異的IgEは保険診療内で測定出来ないことも問題点の一つで、結局アスペルギルス以外の真菌に対する診断には苦労しそうです。

画像所見については、-3項目を割いており、より具体的になりました。中枢性気管支拡張の所見は、早期や軽症例で認められないこともあるので、Rosenbergの基準のように必須項目とはならず。また、今回初めて、HAMの存在が診断基準に組み入れられました。HAMとは、粘液栓の中でも、特に高吸収値を呈するもので(傍脊椎筋と比較し高吸収、CT値で70HU以上)、粘液栓の約半数にみられ、より特異的な所見です。高吸収になる理由は、粘液中のカルシウムや金属イオンが濃縮されるためで、スエヒロタケ検出例や難治例に比較的認められるとされています。

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駆け足で、新しい診断基準を見てみました。より実臨床に即した形で使いやすいのではないかと思いますので、参考にしてください。

参考文献、引用:
「アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き」

2019-05-21

結核 初期悪化 まとめ


最近結核の初期悪化で重症化した症例を経験したので、初期悪化についてまとめてみようと思います。個人的には、はっきりと「初期悪化」と認識できたのは初めての経験でした。ただし、当科では、過去に、多発する脳病変の出現をみた初期悪化症例を学会報告しております。



まず、用語の整理ですが、「初期悪化」は、直訳するとinitial aggravationですが、他にparadoxical reactionparadoxical worseningとも呼ばれています。


結核予防会 結核研究所のホームページの新 結核用語辞典によると、「肺結核の治療開始後,喀痰中の結核菌は減少あるいは陰性化しているにもかかわらず,胸部X線写真上陰影の増大,新陰影出現,胸水の出現,縦隔あるいは頸部リンパ節の腫脹・増大などの所見がみられる現象をいう。初回治療患者にRFPを含む化学療法を行った際ときに見られ,発現時期は治療開始後3カ月以内が多い。強力な化学療法により,急激に死滅した大量の結核菌の菌体に対する局所のアレルギーによるとの考えが支持されている。通常,同じ化学療法の継続で36カ月後に改善を見る。」とあります。



まあ、ほんとこのまんまなんですよね。だから、今回はコピペして終わり、って訳にもいかないので、もう少し掘り下げておきましょう。



発現頻度は1-33%と報告により幅があります。

発症時期は上述のように抗結核薬治療開始後、多くは2週間~数か月以内とされますが、数日で発症することもあるようです。



では、どのような患者に初期悪化が起こりやすいかというと、Chengらの報告では、Non-HIVの結核患者における初期悪化のリスクファクターは、Hb減少、Alb低下、BMI低下、リンパ球数減少、治療開始後のリンパ球数の急激な上昇、としています(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2002;21:803-809Int J Tuberc Lung Dis. 2007;11:1290-1295 )。リンパ球数以外は、高齢者結核で大抵揃っていそうです。



初期悪化を疑った際に、鑑別に挙げなければならないのが耐性結核の存在です。といっても、日本では、初回治療のうちINH耐性が4%、多剤耐性が0.4%と頻度は少ないので(結核 2013;88:749-756)、治療中に画像が悪化した場合は、まず感受性結核における初期悪化と考えてよいでしょう。外国人結核では、多剤耐性菌の割合がもう少し高くなるので(中国で6%、フィリピンで4%)注意が必要かもしれません。



なお、時に、初期悪化による呼吸不全で致命的な状態となり、細菌感染の合併?耐性結核?薬剤性肺障害?ARDS?なんなの??みたいなシチュエーションがあると思います。(今回の症例がそうでした) 特に、耐性結核や薬剤性肺障害については、マネジメントが大きく変わるので、画像である程度鑑別出来ると助かります。



初期悪化 vs 耐性結核



初期悪化では元病変が増大することが多いですが、縮小していることもあるようで、必ずしも元病変のサイズ変化だけでは判断できなさそうです。

Akira Mらの報告では、初期悪化のHRCT所見の特徴として、「元病変の周囲もしくは離れたところ(多くは胸膜直下)のすりガラス陰影もしくはconsolidation」を挙げており、一方、結核の真の悪化時には、「新らたにtree-in-bud appearanceや空洞を伴う病変の出現」を挙げています (J Computo Assist Tomogr. 2000;24(3):426-431)



初期悪化 vs 薬剤性肺障害



上記に挙げた初期悪化の特徴の一つである、「元病変と離れたところのすりガラス陰影」ですと、薬剤性肺障害との鑑別が難しくなります。ちなみに、抗結核薬による薬剤性肺障害は、薬剤性好酸球性肺炎タイプ(胸膜直下のconsolidation)のものが多いとされます。しかし、びまん性のすりガラスや小葉間隔壁肥厚やHPのような小葉中心性粒状影もあり、ああ、やっぱり、薬剤性肺障害って難しいなぁってなります。



初期悪化と診断した場合の対応



初期悪化と診断しても全身状態が良好であれば、抗結核薬を継続の上、経過をみまもります。ただし、高熱の持続、胸水増加による呼吸不全、リンパ節腫大による気道狭窄、中枢神経病変の出現などにより、全身状態が悪化している場合は、ステロイドを使用することもあります。急激に死滅した大量の結核菌の菌体に対する過剰な免疫反応を抑えるためのステロイドです。うーん、結核に、ステロイド…ためらいますよね。ステロイドの導入基準や投与量、投与期間については、明確なものはありません。エキスパートオピニオンですが、プレドニンを1/kgから開始して1-2週間後に徐々に減量していくようです。ステロイドの匙加減に関しては、患者さんの状態をみながら決めるしかなさそうで、経験がものをいいそうです。



ということで、初期悪化、今後は慌てず対処できるようになるといいですね。





参考文献:

結核予防会 結核研究所 ホームページ https://jata.or.jp

結核 2011;86(2):87-99

BMJ Case Reports 2012;doi:10.1136/bcr-03-2012-6142

2019-04-11

COPDに生じる侵襲性肺アスペルギルス症(IPA) まとめ

 侵襲性肺アスペルギルス症(IPAInvasive Pulmonary Aspergillosis)は、悪性造血器疾患治療中、造血幹細胞移植後などの高度の好中球減少状態や、長期のステロイドもしくは免疫抑制剤投与中などにみられることのある疾患です。確定診断は難しく、疾患背景と画像所見から疑えば、治療を開始するしかありませんが、依然致死率が高い疾患です。

 近年、免疫不全は高度ではないもののCOPDを基礎疾患として発症するIPAが増えており(Clin Microbiol Infect 2010; 16: 870‒7)、本邦でも症例報告が散見されます。(日呼吸誌 2018;7(1):39-43、日呼吸誌2019;8(2):102-7)


 実際、IPAからみると基礎疾患としてCOPDの占める割合は1.3%とされ、決して多くはないですが、リスク因子の一つになると考えられています。(Clin Infect Dis 2001; 32: 358‒66)

Clin Infect Dis 2001; 32: 358‒66より引用


 COPDに生じるIPAでは、血液領域にみられるIPAと特徴が異なるようです。

2019-04-03

tree-in-bud appearance


桜の季節ですね。この写真は数日前、とある場所で撮影したものです。3分咲きくらいでしょうか。でも、もうすぐ花開きそうなつぼみ()もちらほら。ところで「木の芽(tree-in-bud)」といえば結核の画像所見として有名ですね。今回は、その病理学的背景と画像上の特徴、注意点などをまとめてみました。